空手の形 日本語ではない 何語なの? 由来を調査
空手の形(かた)の名前は、日本語読みできるものと、明らかに日本語ではないものが混在しています。漢字の表記がありながらも、カタカナの表記だとNGという場面も少ない(私はNGだされた経験無し)のが実情です。サウンド的に中国語由来だろうと思うのですが、調査をしたことはありませんでした。以下にその結果をまとめてみました。
Google翻訳による中国語が聞けるリンク付き 中国語由来であろう形名称
※調査を進めると、我々が常に中国語と呼ぶ北京語由来ではなく、福建語(福州語)由来のものがほとんでした。福建語(福州語)の音声合成サービスが無いので、とりあえず中国語のGoogle翻訳で検証してみました。似てる度の評価は、超個人的感覚です。
発音似てる度の上中下のリンク先は、Google 翻訳のページに遷移します。そのページでスピーカーボタンを押すと、中国語の発音を聞くことができます。その発音を聞いて、誠に勝手ながら、似てる度合いを上中下と分類しました。

Google翻訳で中国語とカタカナ比較
漢字表記 | カタカナ表記 | 雑学 | 発音似てる度 |
---|---|---|---|
砕破 | サイファ | 福州語で獅法(サイファ)と読む「獅子の拳法(ライオンの技法)」という意味。 | 上 |
征遠鎮 | セイエンチン | 戦前・戦時中に、当時の世相を反映して武勇・軍事色の強い表記に改変 | 中 |
制引戦 | セイエンチン | かつては「制引戦」と書いてこう読ませた | 下 |
四向戦 | シソーチン | 四方に向かって戦う | 下 |
三十六手 | サンセイルー | 36種の手技 翻訳は[36]の部分だけ対比してみた。 | 中 |
十三手 | セイシャン | 13の手(技) 翻訳は[13]の部分だけ対比してみた。 | 中 |
十八手 | セーパイ | 18の手(技) | 中 |
二十四歩 | ニーセーシー | 24のステップ(技法) | 下下 |
二十八歩 | ニーパイポ | 「二十八歩」の沖縄方言読み | 下下 |
壱百零八手 | スーパーリンペイ | 108の手(技)翻訳は[108]の部分。仏教の煩悩の数など特別な意味の数字 | 下 |
久留頓破 | クルルンファ | 福州語からの沖縄訛りを経て現在へ | 下下 |
公相君 | クーシャンクー | 18世紀に琉球に伝武した唐人・公相君(中国で位の高い人)の名に由来 | 下 |
内歩進 | ナイファンチ | 中国から伝わった名称との説もありますが定かではない | 中 |
鎮東 | チントウ | 漢字表記は流派により異なる | 上 |
抜塞 | バッサイ | パッサイと表記されることもある | 上 |
羅漢 | ローハイ | 中国武術の羅漢拳に由来 | 上 |
汪輯 | ワンシュー | 18世紀に琉球に来航した清の進貢使節の名前が由来 | 中 |
腕秀 | ワンシュー | 上 | |
王秀 | ワンシュー | 上 | |
慈恩 | ジオン | 日本語読みであろう | 下下 |
慈陰 | ジイン | 日本語読みであろう | 下 |
珍手 | チンテー | 「珍しい手(技)」の意。そんな事より、最後のピョンピョンピョンが珍しすぎる | 下 |
雲手 | ウンスー | 日本語読みであろう | 下 |
三戦 | サンチン | 天地人、身・技・体の三要素など複数の要素を象徴とも言われる | 上 |
黒虎 | ヘイクー | 上 | |
白虎 | パイクー | 上 | |
安南空 | アーナンクー | 上 | |
八步連 | パープーレン | 八つのステップが連なる の意味 | 上 |
平安 | ピンアン | 上 |
源流が同じ 違う流派でそれぞれが発展した形 形の方言みたいなもの?
空手の四大流派(剛柔流・松濤館流・和道流・糸東流)で伝承される形を、技術的な共通点や源流の近さに基づきグループ分けしてみました。各グループには代表的な形を例示し、その特徴を説明します。どれくらい近いのか?遠いのか?1つ目の動画ではリアルタイムに別流派の形を見ることができます。東北弁、関西弁、沖縄弁のような違いかなと、私なりに納得してしまいました。傾向としては、松濤館流の船越義珍氏は、日本語名称推奨派のようで、ガンガンと日本語表記に変えて現在に至るようです。
名称ごと変化するが、流れが似ているもの
観空系 松濤館流
コウショウクン系 糸東流
クーシャンクー 和道流
松濤館流「観空大」 和道流「クーシャンクー」 糸東流「コウショウクン大」の同時演武の動画を引用させていただきます。似ているけど異なります。オリンピックでもお馴染みのチャタンヤラ クーシャンクー(チャタンヤラ クークーサンクー)も広義で似た形と言えるでしょう。
鉄騎 松濤館流
ナイハンチ 糸東流
岩鶴 松濤館流
チントウ 和道流
燕飛 松濤館流
ワンシュウ 和道流
ワンシュウ 糸東流
明鏡 松濤館流
ローハイ 和道流、糸東流
半月 松濤館流
セイシャン 和道流
二十四歩(ニジュウシホ) 松濤館流
ニーセーシー 糸東流
ニーセーシー 和道流
名称(ほぼ)が同じで それぞれの流派でアレンジされて演武される形
バッサイ系 松濤館流、糸東流
慈恩 松濤館流、糸東流、和道流
慈陰 松濤館流、糸東流
十手 松濤館流、糸東流
雲手 松濤館流、ウンシュー 糸東流
サンチン 剛柔流、糸東流
テンショウ 剛柔流、糸東流
さいごに
空手の形には、それぞれの名称に込められた意味や、流派を超えて受け継がれてきた共通の何かが存在するようです。形の読み方一つを取っても、中国語や沖縄語(方言)の影響を感じられますし、形の名前に込められた思いやテーマを感じ取ることもできます。ちょっと飛躍して理解せざるを得ないものもありますが、それはまだまだ自分が至らないということで、先輩たちの背中はまだまだ見えず、、、押忍。
監修・参考情報
調査・監修:河合聡志(世田谷区空手道連盟 事務局長)
Googleの無料サービスを活用し、空手大会の集計から発表までをデジタルで完結させる仕組みを構築。2025年以降はAIを活用したデータ整理の省力化を模索。